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知をするとお聞きしたその前の晩に、私から話したのです。そして一晩中2人で泣き明かし、翌朝2人でお祈りをしました。私たちのからだは神から与えられたものだから、そのままお返ししましょうと話し合ったのです」。そしてそのあとで、主治医が、手術はできないし、化学療法も効かないという事実を告げたという次第だったのです。牧師は、神に祈りこころは静かになった状態でその医師の話を受け止めたのです。
愛する妻から告知を受けてよかったと私は思いました。私もその手紙をいただかなければ、医師が告知をすべきだし、やっぱり宗教家は立派に自己への告知を受け止めるものなのだと思い込んでいたかもしれません。
だれが告知をするかはケース・バイ・ケースなのです。私が告知をする場合には必ずナースに傍らにいてもらうようにしています。その患者さんのサポーターになる人にも隣りにいてもらい、私がどう言ったかをレジデントにも聞いてもらいます。そうでないと、どうしてもちぐはぐなところが出てきてしまうからです。患者さんには座ってもらったほうがいいか、窓を背にしたほうがいいか、あるいは花でも飾ったほうがいいか、その方がもっとも落ち着くムードをつくるのです。
秋田の知人が、医師から「昨日組織検査をしたらがんでした」と廊下で立ち話で告げられたと憤慨していました。何といのちが荒っぽく扱われていることかと、医師への信頼がもろくも崩れ去ったというのです。これはしばしば見受けられることです。私は告知をするときには、時間の余裕がなければ告知はしません。まず家族に先に話します。家族でも意見が分かれることがありますが、だんだんと意見の一致をみるようにもっていきます。欧米のように当人次第というのでないのは文化の違いでしょう。こう

 

 

 

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